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『新しい社会 公民』(東京書籍の中学校社会科公民の検定教科書)読書感想

東京書籍の中学校社会科、公民の検定教科書『新しい社会 公民』を読み終わった。読んだ直後のこのタイミングで、感想文を書き残しておきたく、このブログ記事を書いている。

塾講師としての仕事柄、検定教科書をよく読むのだが、東京書籍の社会科の教科書を読んだのはこれが初めて。塾の近場の自治体が採用してる教科書を選んで読んでたら、社会科は、帝国書院の地理、歴史、公民。そして、東京書籍の公民。この4冊を読んだ。

なので、帝国書院の公民と比べてしまうのだが、東京書籍は全科目の教科書を出してるマンモス出版社なので、その強みを生かした教科書だなと感じた。記述内容も、他科目との連携を意識した書き方だなと随所で感じた。例えば、SDGsとかの課題を解決するには、社会科の地理や歴史で学んだことや、さらに理科で学んだことも活かせるかもしれない、などとひと言さり気なく書いてあったりして。こういうのを若い中学生が読むとなると、うん、素晴らしいことだなあと思う。

ただ、このご時世のお楽しみ、QRコードから飛べるネット上の副教材に関しては、帝国書院のほうが俺は遥かに好き。上述した、東京書籍の総合性が、裏目に出てる。と、俺は思う。帝国書院は、動画教材がメッチャ豊富で。なんか、NHKと提携してて、NHKの動画がバンバン見れる。社会科の内容を学ぶのに、動画はうってつけである。それに対して、東京書籍のネット副教材は、なんか、シミュレーションとかいって、ちょこちょこクリックすると画面がちょっとだけ変わる、ミニゲームみたいなのとかばっかりで。さらに、かなりの割合が、他科目との関連で、技術家庭やら保健体育やら道徳やらの教科書の該当ページが載せてある。なんでネットですら生の教科書の文章を読まにゃならんのよ?せっかくIT使ってるんだから、動画をこそ見たい!しかも、技術家庭とか、断片的に拾い読みしても、消化不良感が残る。これ、実際に「中学で東京書籍の技術家庭の教科書を使って学習してる人」のみが、あー納得、っつって、すっと腑に落ちるっていうパターンなんじゃない?技術家庭の教科書が東京書籍じゃない中学生は、だから、わけわかんなくなるだけじゃないかな。そこらへん、全科目の教科書を出してる東京書籍の、ゴリ押し感を感じてしまう。検定教科書なんだから、もっと、すべての人が使いやすいようにしてくださいよ、って、思った。

あと、各章末の用語穴埋め問題の解答がないのも、この東京書籍版の、帝国書院版と比べて劣ってる点として挙げられる。しかし、まあ、頑張って読み込めば、用語穴埋めは自力でできるっちゃあできる。それよりもっと重大なのは、「探求」とか、なんか、学んだ内容を図にまとめて考えを深める、みたいなアクティビティへの解答例文がどこを探してもないこと。これ、帝国書院版も、なかったんだよねえ。もし東京書籍版が、解答例文を載せてくれたら、その一点だけで、俺は東京書籍版のファンになっちゃうんだけどなあ。なんか、これに限らず、NHKの中高生向けの動画教材とかでも、解答を用意しない問いかけ、みたいのが流行してるようだが、マジ、迷惑でしかない。自学自習しにくい!自分で答案を作った上で解答を見て考えを深めたい人って、必ずいるはずだから。そういうやる気のある人の能力向上を妨害するこのような悪しき考えから目を覚ましてください、偉い人達は。お願いします。

ああ、悪口ばっかりだから、最後は褒めて終わりたい。ネット副教材の中の、SDGsの解説ページは、ボリュームがあって、わかりやすかった。東京書籍の全科目に対応しているその総合性が、わかりやすくてバランスの取れた記述内容を生み出しているのではないか。何が問題かをみんなと一緒に考えるには社会科が必要だし、個々の問題の分析と具体策提案のためには理科と数学が必要だし、わかりやすく人と考えをやり取りするには国語や英語が必要。みたいなことを、やんわり読者に提案できる資格が充分にあるよね、東京書籍さんには。だって全科目教科書出してる版元なんだもん。SDGsのまとめは、良かったっす。

教科書本文も、写真もグラフもきれいでわかりやすかった。あー面白かった。