池上彰、佐藤優の共著『人生に必要な教養は中学校教科書ですべて身につく』(中央公論新社)を読了した。その感想文を、ここに書く。
この本は、中学校の検定教科書を、社会、理科、数学、国語、英語、道徳と科目別に、都内人気2出版社(道徳だけ8社)の教科書を読み比べながら、いかに中学校教科書が現代人の教養再構築に適した書物であるかを説いた本である。
半年ほど前から塾講師を始めた俺は、塾のある自治体が採用してる検定教科書の英数国理社を片っ端から読み、とうとう先日、ラストの19冊目を読み終わったところで、それと前後してこの『人生に必要な〜』の存在を知った。そこで早速、読んでみたというわけ。
道徳は別として、『人生に〜』で取り上げられた教科書のほとんどを、俺はつい最近読了したばかりだったので、それもあり、非常に面白く読んだ。
果たしてこの本を読んだ人のうちの何%が、実際に中学校教科書を購入するなどして読むんだろう?まあリアルに考えて、子供が中学校に入学したりして、家に教科書があるという人、あとは俺みたいに塾講師、それからもちろん学校教師、それ以外のパターンで、中学校教科書を手に入れて読み通すという人は、相当少ないだろう、と、俺は思う。
そう思うのだが、実際つい数日前に教科書を5教科読了したものとして、中学校の検定教科書は本当に読むとためになる本だから、読んだほうがいいですよ、と、声を大にして言いたい。
この『人生に〜』のどこかでもちらっと書いてあったが、高校の教科書は、前提知識なしでいきなりかじりつくにはレベルが高すぎる。それ、俺も同意。心底プライドを捨てて、中学の教科書からスタートするのが、学び直しが挫折しないで済む秘訣だと思う。まだ高校の教科書を本格的に読み直してないからあんまり断定的なことを今の俺は言えないんだけど、中学の教科書の内容は本当にかっちりしてて充実してる。けど、前提知識は小学生レベル、だから、普通に暮らしてる人だったらたいてい知ってる社会常識で対応できると思う。で、中学校の主要5教科を読み終わってみて、あ、この中学レベルをまんま前提にして高校教科書が執筆されてるんだったら、そりゃ丸腰の一般人にはヘビーすぎるわ、と、予想できる。それくらい、中学教科書の内容は、3年間の学びを通じて、深いところまで到達している。
いくつか例外はある。例えば、数学が得意な理系の人には、中学数学はちょっとマジで当たり前すぎる。俺みたいに、中学生の学習指導をする必要がある、などの特殊事情がないのなら、中学数学まで戻ることにはあまり意味があるとも思えない。
しかし、これは特に社会科について言えると思うんだけど、どんどん時代は移り変わっていくんで、最新の教科書を読んで自分をアップデートさせることには間違いなく意義があると思う。この『人生に〜』で冒頭に配置され、かつ最大のページ数が割かれているのも社会科だ。
うーん、やっぱし池上彰と佐藤優で、メッチャわかりやすく書かれた本だから、あんまり付け加えて言うことが思いつかない。そうだな、中学校の教科書を実際読み通すための秘訣、に、なればと、ひと言。俺は、塾での自分の授業でもよく使う、『教科書ぴったりトレーニング』っていう、新興出版社ってとこが出してる教科書準拠問題集を、教科書を読むのと同時並行で合わせて読み進め、というか、問題を解き進めていったよ。単に教科書をザーッと読んでいくだけではあんまり教科書の内容が身につかないんじゃないかと、それが心配。まあ理想は、塾や学校や家庭などで、生徒や子供に実際教える現場を持つこと。でもそうじゃない人でも、例えば営業職の人とか美容師さんとかで、お客さんに話を合わせるために一般教養こそが重要って、身にしみて感じてる人、たくさんいると思う。そうだなあ、『ぴったり』、一冊1300円以上するし、買って一回解いてその後ほっぽり投げるんじゃ、コスパが見合わないかな。どうだろ、俺だったら、例えば、職場内、もしくは異業種交流で知り合った仲間同士とかで教科書読み合わせサークルとか作って、教科書で随所に設けられてる話し合いのアクティビティを定期的に一緒にやってみる、とかはどうですかね?
そんなこんななことを、読んで、思いました。『人生に必要な教養は中学校教科書ですべて身につく』、良い本でした。