説明責任の行き届いた社会を目指して

大昔、生物学者になりたかった40過ぎが、今また再チャレンジ

『マネジメント』日経BP版の第2分冊を読み終わっての感想

ドラッカーの『マネジメント』を読み進めている。日経BP版を図書館で借りて読んでる。日経BP版は4分冊に分かれ、その第2分冊をちょい前に読み終わった。その感想を書く。
組織の中間管理職、いわゆるマネージャー、と、言っちゃっていいのかな。この層こそは現代社会のリーダーであり、自律的に、自分の責任を自覚し、企業人なら必要利益はしっかり確保した上で社会的責任も果たしていくべき、みたいな話。でも、短くまとめちゃうと、ドラッカーの言わんとするところがすぐに失われていく。ドラッカーの主張するマネージャーの社会的責任だが、これは、本業を犠牲にしてまで多くの責任を追うことは無責任だからね、などと、丁寧に線引をして、実地にそのまま活用する際の便宜を図っているように感じた。『もしドラ』なんてのも昔流行ったし、あと、俺自身は昔、この『マネジメント』の、エッセンシャル版、っていうやつは読んだよ。けど、あんまり感銘を受けなかった。ドラッカーが第一分冊のどっかで書いてたけど、ドラッカー自身、本はなるたけ短くしたい人なんだ。だから、そのドラッカーをしてすら、やむを得ず長くなっちゃった本なんでね、この『マネジメント』は。星新一っていうショートショートの有名作家が、時々発表した長編小説、例えば『ブランコのむこうで』という本を俺は子供の時に愛読したが、そんな感じなんだよ、マネジメントも。本来、これ以上短くしちゃいけない、パンパンに充実した内容の本なんで、是非とも、是非とも完全版の原典に直接触れるべきなんだ。
まあ、何しろは、知識労働者ってのが、強制的に働かされるってのは原理的にありえないということを喝破してる。ナレッジワークはフリーな脳みそでしかできないんで。で、二言目には、だからマルクス主義はダメなんだ、というのも繰り返される。数年前に俺は資本論も一度読んだけど、ドラッカーの批判してるのは資本論の内容もそうなのだろうがマルクス主義を実践してた当時のソ連とかがターゲットなのだろう。冷戦真っ只中の時代を感じる。
マネジメントを知る上で必要なすべてを本に盛り込む、という意欲作だろうなあ。どの章をとってもスキのない記述内容。幅広い教養、また、無計画に膨らんだ教養のひけらかしではなく、あくまでマネジメントに関わる事柄だけを全方位的に語り尽くしてく筆の運びが、なんともはや、素晴らしい。この第2分冊の後半あたりにガンガン出てくる税制などの数字の話が、正直俺にはよくわかんなかった。お金の数字上のことに詳しい人には、ズバズバ来る内容なんだろうなと思う。逆に、「非ユークリッド幾何学を知らなかったと言ってニュートンを批判するようなものだ」という例えが出てくるが、この問題にズバリ取り組んだ経験のある俺は、非常に興味深くこの箇所を読んだ。
この第2分冊を読んで、感想としてまず第一に、じゃあそのようなマネージャーとはどんな存在なのか、どうすれば良いマネージャーになれるのか、という疑問が浮かぶ。そして、まさに次の第3分冊が、その問題に正面から取り組んでいるようなのだ。内容の提示の順序、流れが素晴らしい。これが世界レベルのビジネス書なんだな。