数研出版の数学の検定教科書、『新編 数学B』を、読み終わった。その感想を書く。
語学みたいなノリで、統計のイロハが、とりあえず書いとけみたいな感じでじゃんじゃん書いてあったのが、俺としてはあんまり好きじゃない。二項分布のグラフを表す関数とかが書いてあったりして、説明不足のままネイピアの数だのなんだのがうじゃうじゃーっと書かれてて、これ、数学アレルギーの人が見たらさぞ嫌だろうなと思う。昔の検定教科書だったら、高校の教科書たるもの、論理の力を鍛えるのだという気迫に満ちてて、限られた紙面をそういう風に使うのは断る!とでも言いそうな感じだったように、俺は思うんだけど、どうかな。なんか、産業界からのニーズに応えて、こうなってんじゃないのこれ?実社会は統計をわかってる人を求めてる、だから、高校の教科書で扱え、っていう、短絡的な思考回路を、俺は感じるんだよね。そうじゃないだろう、本当に必要なのは。数学は理科とは違う。真理を愛する人のための高尚な遊び場であるべきであって、そうであってこそ、真のイノベーションの源泉足りうるんだよ。
と、これは、『新編 数学』シリーズへの感想ではなく学習指導要領に対してのコメントになっちゃってるか。話を元に戻す。えーと、『新編 数学B』の感想ね。
そうだなあ、統計の他には、数列のこととかも書いてあったし、大事な内容はあったと思うよ。けど、統計にだいぶ紙面を取られちゃってか、なんか、分量としては少なめな気がする。新編数学シリーズが、ボリュームを絞った薄い本を目指してると俺は思うのだが、この数学Bはそれがあまりにも顕著で、どうも、やり終わった後の満足感があんましない。物足りない。
ちょっと上に述べたことと全く矛盾するようなことを言っちゃうんだけど、やっぱし統計って大事なんだよね。数学と実社会の接点だから。だから、統計で出てくる式とかをきちんと理解することって非常に重要なんだけどもさ、新編数学シリーズの書き方だと、あまりにもぜい肉を削ぎ落としちゃってるのが裏目に出て、重要な部分の繰り返しとかが一切ないもんだから、一読して意味が取れない。なのに、どんどん話は進んでく。で、結局、斜め読みしちゃう。この教科書の読者の大半はそうなっちゃってるんじゃないか。
改善策を提案しないまま批判ばっかりするのも申し訳ないんで…。こういうのはどうですか?統計の部分は、まず章の始めに、これから高校レベルを一部超える範囲のことを扱います、なので、全部をすぐにわかろうとしないでください、と、読者に注意喚起。で、分かる説明、短い説明を心がける、これは、そうしないと新編数学じゃなくなっちゃうから、書き方はこのままでOKだと思います。思いますが、加えて、より厳密な書き方をした、それでもやはりわかりやすい、他書を、教科書内で紹介してもらいたいっす。どうですか?教科書執筆陣の先生方…。もしくは、統計に関して、もう一冊別の本、あ、または、インターネットコンテンツで、統計に関してのチュートリアルみたいなのを、作っていただけませんか…。
そんな感じかな、この数学Bに関しては。新編数学の方針と統計分野との相性の悪さが目についちゃった。