説明責任の行き届いた社会を目指して

大昔、生物学者になりたかった40過ぎが、今また再チャレンジ

天文対話を読んで、セントラルドグマについて考えました

ガリレオの天文対話、岩波文庫で上巻は読み終わりました。今、下巻を読み進めてる最中です。読みながら考えたことを、このブログ記事にしたためておきたく、今、Macを立ち上げたところです。
 
先に下巻末尾の訳者解説を読んじゃって、その意見を踏まえながら本文を読み進めてます。ので、ちょっと訳者の考えに染まりすぎちゃってるかもですが…。いや、「科学はイデオロギーと無縁ではいられない」と、訳者の青木靖三先生は解説で書いていて、それに俺も賛同、してます。
 
ガリレオの言ってること、やってることは、科学を突き詰めて考え、正常に健康に、他の人たちとお互い高め合いながら、科学を発展させていきたいという、それだけです。しかし、なんともはや、邪魔が入るんですよね。でも、邪魔する人たちも必死で。宗教的な聖域を守るという行為を、現代の高みから一笑に付すのは、俺はしたくない。現代でも、それこそ俺自身も、場合によっては同じような行動に出てしまう可能性は十分あると思う。つまりは、自分のほうが間違ってるとわかりつつ、ある意見を批判して潰していくという行為ですね。
 
俺が好きな生物学にからめてさらに話を展開していきますね。皆さんは、「セントラルドグマ」っていう言葉を、ご存知でしょうか。遺伝情報は、DNAからRNAへ、そしてRNAからタンパク質へと流れ、その逆はない、という考え方です。DNAにすべての遺伝情報が書き込まれていて、それが回り回ってタンパク質の構造を決定し、タンパク質が色々振る舞うことで生命現象が営まれていく、ということです。これは、DNAの構造が二重らせんの形をしていることを発見したクリックという人が唱えたんです。ところが…。後になって、RNAの遺伝情報がDNAに「逆転写」される、という現象が発見されちゃって。セントラルドグマに反してる!と、大騒ぎになりました。
 
でも、本当は、大騒ぎするほうがおかしかったんだよ。クリック自身が、既にみんなに警告してたんだ。これは「ドグマ」だよ!ドグマ、つまり「俺の思い込み」が多分に入っちゃってるんだよ!って、わかってほしくて、わざわざ用語に「ドグマ」っていう言葉を選んで使ったんだと思う。クリックはもともと物理学者で、生物学畑に転向してきた人物だったから、そうだよ、多分ガリレオの食らった異端審問の経緯とかも、踏まえてたんじゃないかな。だから、一見説得力のある強力な理論を世に送り出すに際して、どうか皆さん常に批判的に検討して下さい、という思いを込めて、セントラル「ドグマ」って言ったんだよ、多分。
 
さらにうがった見方をするなら、セントラルドグマは、第二次大戦後に始まった冷戦下で、英米側の考え方、個人の自由とか、そこらへんのコンセプトを色濃く反映してたんじゃないか。遺伝情報は、一人一人個人に、または一つ一つの細胞にもっぱら属するものであって、っていう。だから、だからトランスポゾンっていう現象が、発見されたときから何十年も学会から無視され続けるなどということが起こったんじゃないか。個人主義に反する、つまり、生物学も科学の一部、学問の一部、だから個人の自由権を保障する人間社会を一緒に作っていくという活動に全ては収斂していく「べき」でしょ?それに対して、トランスポゾン、すなわち遺伝子が染色体上を勝手に移動するなんてのは、英米側の我々の考え方に反するから認められない…と、そういうことだったんじゃないかな。
 
セントラルドグマは重要な概念です。どう重要かと言うと、例えばmRNAワクチンの安全性の説明をするのに土台となる理論だったりするんじゃないかな。mRNAワクチンは、中身はRNAです。RNAを体内に注射。すると、体内で、そのRNAからコロナウィルスの体の一部とおんなじタンパク質がちょびっとできる。で、そのタンパク質を体の免疫機能が認識して、こういう異物が体内に入ってきた、だから、次に同じやつが入ってきたら速攻で排除できるように、抗体を作っとこう…と、そういうシステムでmRNAワクチンはコロナウィルスに対する抗体を体内に準備する、と、これが俺が理解してる範囲でのmRNAワクチンの働く仕組みです。
 
ところが、この、RNAを体内に注入するというのが、みんなが怖がってるとこの一つだったりしますよね。RNAを打つと、それが回り回ってDNAになり、自分のDNA情報に影響が及ぶ、書き換えられるんじゃないか、っていう。で、それを完全否定することもできないと思うんです。実際、RNAからDNAへの逆転写という現象は確認されているから。
 
でも、多分、多分大丈夫だろうと思って、俺自身は、早々、コロナワクチン2回受けました。
 
もっと逆転写という現象について知らないと、さらに突っ込んだ話はできないけど。逆転写っていうのは、もっと、ウィルスとかそういう、マジで狡猾にコンピュータウィルスみたいに生物の細胞を乗っ取るやつらがやることであって、今回のコロナワクチンみたいに、コロナウィルスの体の一部の遺伝情報の乗っかったRNAだけを取り出して身体に打つのであれば、細胞の乗っ取りみたいなことは起こらないんじゃないか…と、いやいや!もっと調べないと確実なことは言えない。
 
天文対話の話にも戻しつつ、まとめると、セントラルドグマとか天動説とか、それまで主流とされてきた考え方や、その考え方に乗っかって動いちゃってる実社会の事情とかに、科学者は常に立ち向かっていかなきゃならない。でも、どんなに真剣に頑張っても、時代のイデオロギーと完全に無縁ではいられないのも運命だ。だから、歴史に学んで、天文対話をよく読んで、ガリレオの辛苦を追体験し、これは昔の話じゃなく、ずっと変わらない人間社会の本質なんだよ、だから、最先端の新しいことをやろうと思ったら、誰しもが通る道なんだとよくよく納得しておく必要があると思います。