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大昔、生物学者になりたかった40過ぎが、今また再チャレンジ

『やさしい中学数学』読書感想

きさらぎひろし著『やさしい中学数学』を読了した。その感想を書く。

架空の男女2人の中学生との対話形式で書かれた本で、大変、自学自習に適している。

結構分厚いけど、これで、中学数学全体が網羅されていると思えば、そんなにメチャクチャな分量というわけでもない。しかも、解説がメチャ丁寧だから、それを考えれば逆にコンパクトと言える。この分厚さに抑えることができているのは、だから、ドリルっていうか、高校入試の本番とかで戦えるだけの学力を養う練習問題みたいのは、この本だけでは不足なんよ。この本は、わかる、読める!という喜びを、中学生や学び直しにチャレンジ中の大人たちに提供する、という一点に非常に的を絞った、そういう参考書なのだ。だから、実戦力をつけたい人は、その目的でこの本に手を出すのは止めたほうが良いと思う。

各論的な指摘も、二、三、しておこうかな。いや、中2の図形んとこで、三角形の合同条件の、「2辺とその間の角度が等しい」っていうやつが、あるじゃないですか。で、なんで「その間の角」なの?というところを、コラムみたいなページ(「数学 お役立ち話22」)で、きちんと説明してる。端っこの方の角だと、いいとこまでは行くんだけど、最終的にはその三角形、2パターンできちゃって、1つには定まらないから、だからダメなんだ、と、懇切丁寧に説明してくれる。ちょっと疑問に思うところを、こうやって取り上げてわかりやすく説明してくれることで、読者は、素直に、数学への関心をもっともっと育てていくことだろう。かと思いきや、中3の2次方程式のとこで、解の公式を導出するってのは、あえてチャレンジしないきさらぎ先生なのである。複雑すぎて、この本の読者にとってはかえって逆効果になる、という先生のご判断なのだろう。その辺のさじ加減が絶妙で、その注意力のテンションが初めから終わりまで充溢している。方々で評判が高いのも、全くもって、うなずける。