説明責任の行き届いた社会を目指して

大昔、生物学者になりたかった40過ぎが、今また再チャレンジ

柳美里『生』読書感想

柳美里の『生』という本を、読み終わった。感想を書く。

まさか『命』四部作のうち、この第三部の『生』まで延々と、東由多加の闘病の描写が続くとは思っていなかった。苦しいだけじゃないか、と。ところが読み進んでいくうち、ああ、このような闘病が、美しいんだ、と、だんだん読んでる俺の意識が変わっていくのを感じた。

それから、これは、あんまり俺は恋愛経験とか豊富な方じゃないから、本当に陳腐な感想なのかもしれないけど、東由多加との子を何人も流産した経緯の話が、最後の方に出てきた。ここを読んで俺は、ああ、この恨みを、柳美里は、心の奥で、東由多加に仕返ししたかったっていう気持ちもあったんじゃないかなって、思った。人間同士は、他人の関係だと、お互い傷つけ合うって、無理だけど、親密になればなるほど、簡単に深く傷つけることができる。でも、そんな感想をもし柳美里さん本人や、普通に暮らしてる大多数の人に聞かれたら、人生について何もわかってないねと一蹴されちゃいそう。付き合いが深まると、愛も憎しみも両方増えていくものなのだろうか。今の俺にはよくわからないよ。

中盤など、細かな誤字脱字が散見された。後から修正するのは簡単だろうから、これらはあえて残されているんだと俺は思う。「わたし」とすべきところを「わた」とか、あと、俺の記憶違いでなければ、漢数字の二がカタカナのニになってたりとか。メチャ苦しい時に書いた文章であったことを生々しく伝える痕跡であろう。

「たくさん話したい」と、柳美里東由多加がずっとずーっとしゃべった、というエピソードも、心に残った。それ以上良いことなんてないだろう。

『命』では、人が一人生まれるって本当に大変なことなんだ、と思ったが、この『生』では、人が一人死ぬっていうのも本当に大変なことなんだ、と思った。

ちょっとこれ以上今は言葉にならないや。短めだけど、これが感想です。