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『新しい科学2』(東京書籍の中学2年生用の理科の検定教科書)読書感想文

塾講師になってしばらく経った。コツコツ読み進めてきた中学5教科の各科目の検定教科書読書ももうすぐ全部見終わる。今さっき読み終わった『新しい科学2』、これが終わったんで残りはとりあえずあと2冊、『新しい科学3』と、あと公民の教科書を一冊。それでひとまず、さしあたり必要な中学の教科書は全部網羅できる。ふー、疲れた。

中学校の検定教科書を正面切ってレビューしてるブログが、俺の調べた範囲では見つからなかったので、ちょっとは役に立つんじゃないかと期待しつつ、このブログを書いている。

さて、本題に入る。上述のように、仕事柄、東京書籍という出版社から出てる『新しい科学2』という中学2年生向けの理科の検定教科書を読んだ。読後直後のタイミングで、感想文と言うか、感じたこと、考えたことをここにまとめて、読んで下さる皆さんのお役に立ちたい。

検定教科書は読み進め方がモノによって独習が困難な場合がある。というのは、一般向けの書籍とは異なり、中学生が授業で先生にガッツリ教わりながらちょっとずつ読み進めることを想定して作られてるので。で、この『新しい科学』シリーズもそうだし、英語の三省堂の『NEW CROWN』とかもそうなのだが、教科書準拠の、出版元がセットで作ってる副教材とかが、一般人では手に入らなかったり、法外なほど値段が高かったりする。それで仕方なくその副教材、おそらくは実験の動画とか、記述式問題の解答例文とか、そういう致命的に重要なコンテンツを断念して、それでも教科書にかじりつくしかない。中学生ではない人が教科書に取り組むとするならね。でも、じゃあ教科書じゃなくてもっと他の本のほうがいいんじゃないの?と突っ込まれると、いやいやそれはまた違う話だろ、と、俺は思う。部分的にしか活用できなくとも、それでも教科書はやはり素晴らしい。文部科学省や老舗の出版社が心血注いでできあがってるのが検定教科書なんで、教科書販売所で廉価で買える、図版なども美しく文章も練りに練られた素晴らしい本で、教科書を無視して学習指導をしようというのは、日本人が米以外を主食にして食生活を組み立てようっていうのと同じくらい不合理なことである。と思う。

俺は、その、学校教師しか買えない副教材を使えない代わりに、民間が、っていうか、新興出版社ってとこが出してる、『教科書ぴったりトレーニング』っていう教科書完全準拠の問題集を一緒に解き進めながら、教科書を読み進めていて、今回もそのようにした。これで、ただ教科書を読むより、だいぶアクティブに、そこそこ深く教科書の内容に親しむことができてるんじゃないか…と、思う。

内容は、面白かった。これ、英語とかでもそうなんだけど、中2という学年の重要性たるや半端なものではない。理科は、内容が盛りだくさんで、だから、中1から中3までまんべんなくやらないといけないんだけど、それにしても、中2の範囲は大切なものばかりだなあと。おそらくは、中1は、小学生から上がってきたばっかりの生徒たちに対して優しく、と。中3は、高校受験を控えてる、だから配慮しないと、と。で、そういう忖度が一切ないのが中2なんだよね。そこに、ドカドカ、重要な単元をぶっこむ文科省。まあ当然といえば当然だろう。俺だってもし文科省だったらそうするわ。

例えば、電気についての単元がある。中2の範囲で。ここを真剣にやると、理科と現実世界とのダイナミックな関わりに感じ入る。電磁誘導とか、死ぬほど大事っしょ。最初は、こんなのなんの役に立つの?って感じだったのが、今や、電気のない生活なんて考えらんないよね。それだけ、理科の分野に分類されるたぐいの発見や発明が、社会全体に対してインパクトがあるってことだ。また、数学と理科の違いについても、この電気の分野を読み進めながら、考えるところがあった。数学とかの美しい対称性をピュアに追い求めるタイプ、若い頃の俺とかもその末席だったと思ってるが、そういうタイプの人間からすると、電磁誘導を一方向に起こさせモーターを回す、そのための整流子とブラシ、なんて話は、なんだか複雑で、数学的美しさがなく、食わず嫌いしてしまうということが往々にしてあると思うんだけど。こうして年食ってからもう一度この教科書を読み直してみて、ああ、そういうことじゃねえんだ、と、反省した。モーターの仕組みより重要な単元を、じゃあ他に探してみろよ?って、そんなの無理でしょ。トヨタ法人税なしで日本の財政が成り立ちますか?だからよー、美しい対称性を追い求める途上に、モーターの仕組みという単元を配置するのは間違いだ。この話は、社会との関わり、すなわち、役に立つから大事なんだという発想で見ていかないとダメなんであって、ピュアサイエンティストの心しか持ってない人には消化不良を引き起こす。

ある意味もっとやべーのが天気の話。中緯度地方の上空には偏西風が吹いてますとかそういうの一つ一つとっても、その情報を2000年前に持ってけたら良いのにと思う。未来の天気がわかんないから、神頼みしたりとか、色々死ぬほど苦労してきたわけでしょ、人類はみんなしてさ。それが、雲の分類とかが美しい写真付きで、中学生向けの教科書で配られることの尊さよ。

まあ、そんな感じかな。理科そのものの話は、今回のブログではこんくらいにしときます。

もし、前にアップした、大日本図書っていう別の出版社の理科の教科書の読書感想文も読んでくださってる方がいらしたら、そういう方たちに向け、ちょっと、比較してどうだったかについても書こうかな。

読む前の第一印象としては、俺は東京書籍のほうが好きだったんだけど、こうして読み進めてみて、やっぱし甲乙つけがたし、と思うようになった。東京書籍版の第一の長所は、節の最初のページにどーんと出される文章題と、章末に示されるその文章題への解答例文のクオリティの高さだと思うんだけど。それはたしかにそうなんだけど、でも、大日本の教科書解説文も、両方読んでみて、どっちも優れてると思ったし。天気の単元とかでは、東京書籍の方は、圧力とかの物理の単元との連続性を意識しすぎて、地学独特の雰囲気をもっとストレートに表現してる大日本図書のほうに、やや軍配が上がるかなと。読んだときの知的興奮という観点では。いや、俺の一個人としての見解でして、はい。