説明責任の行き届いた社会を目指して

大昔、生物学者になりたかった40過ぎが、今また再チャレンジ

『セント・メリーのリボン』読書感想

稲見一良という作家の、『セント・メリーのリボン』という小説を読み終わった。その感想を書く。

今俺の手元にあるのは、光文社文庫の「新装版」で、表題作を含む5本の短編が掲載されている。それらを通しで読み、で、巻末の、東えりかという人による解説を読む前に、自分の言葉で感想を書いてみたいと思って、今、これを書いている。

俺、都会っ子で、全然知らないから、猟銃のこととか、猟犬のこととか、そこらへんのことがワンサカ書いてあって、視野が広がった。

世界観っていうのかな、書こうとしている対象が、スケールが大きいのも、気に入った。猟をして食べ物をゲットする、というのを繰り返し書くからには、人はなぜ猟をするのか、ということについて読者に考えさせるというのも、著者の意図するところなんだろう。戦争の話、盲導犬の話なども、大きく見れば、その底を流れる思想として、普段の生活の基盤となっている食料、平和、などなどについて、一旦立ち止まって考えるべきだ、ということなんだと思う。

前から2本めの短編の「花見川の要塞」にて、見えないはずの機関車が見えたというエピソードも心に残った。謎めいていて、著者の意図をすぐにわかろうとしないほうが良さそう。不思議なものを不思議なままにしておくことも時には大事だろう。